2013年5月26日日曜日

Replicator2で高解像度印刷に挑戦する

Makerbotの3DプリンターReplicator2は最小積層ピッチ0.1mmとされていますが、実はそれ以上の解像度で印刷を行う事ができるのはご存知ですか?

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積層ピッチ0.065mmでの出力

一般的な3Dプリンターでは積層ピッチはZ軸の送りネジで制御されています。この送りネジ、実は機械的には0.1mmよりも遥かに細かいピッチで高さを制御する事が可能です。実際は様々な問題があるため、必ずしも実用的に高解像度印刷ができる訳ではないのですが、例えばUltimakerでは0.02mmでの出力成功例があります。



1. 用意する材料、データとかソフトとか

今回、出力に使用したモデルはMorenaP氏作成のかわいいカエル、TreeFrogです。ちょくちょく出力サンプルとして使用されているのをみかけますね。印刷時間を節約するために、55%程度のサイズに縮小して出力しました。

フィラメントはMakerbot純正の白色PLAフィラメントです。いささか扱いにくいフィラメントですが、表面と細部を確認しやすいため選択。

ソフトウェアはフロントエンドにReplicatorG、スライサーとしてSkeinforge50 + pypyを使用。設定はwhpthomas氏の100ミクロンプロファイルをベースにしています。

2. 結果がどうだったかというと

MakerbotによるとReplicator2は一応0.02mmまで解像度を上げる事が可能ですが、今回は0.04mm(40ミクロン)までしか出力ませんでした。というのも、0.04mmでも問題続出で解決できなかったためです。

先ずは0.27mm(標準のMedium設定)と0.1mm(High設定)での出力です。いずれもMakerbotによって公式にサポートされている解像度なだけあって安定した印刷結果です。

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0.27mmでの出力。埃には目をつぶってください…orz 出力時間9分

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0.1mmでの出力。よく見ると積層痕がはっきりと分かるが、0.27mmに比べると断然精細な結果。出力時間18分

次に概ね出力に成功した0.065mmと、いろいろうまく行かなかった0.04mmです。

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0.065mmでの出力。積層痕は殆ど分からない。出力時間30分

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0.04mmでの出力。足の間、目の間にひも状のゴミが発生しているのが分かる(これでも一番マシなサンプル)。一方積層痕は肉眼ではほぼ判別できない。出力時間60分

LayerComparison

解像度の違いによる比較

高解像度で出力すると積層痕は判別できなくなりますが、射出成形品のようなつるつるの表面にはなりません。どちらかというとシルクのような質感になります。Z軸方向については微細なディテールも表現できるようになります(XY平面の解像度はノズル径に依存するためZ軸方向の積層ピッチを小さくしても改善しません。)

一方で積層ピッチを小さくするにしたがって色々な不具合が発生してきます。出力時間が長くなるのはやむを得ないのですが、ひも状のゴミや表面のぶつぶつ、ディテールが溶けたりと切りがありません。出力設定を変更する事である程度は軽減できるのですが…

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特に設定を調整せずに0.04mm積層したサンプル。ひも状のゴミが酷く、鼻先に穴が開いている。

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脚の裏なども結構酷く崩れている

3. 設定をいろいろ試してみたけれども決定打は見つからない

a. 印刷速度

高解像度出力の場合、1層目の印刷速度を15mm/s前後に設定します。これをしないと結構な確率で一層目が印刷プラットフォームに食いついてくれません。SkeinforgeのSpeed設定に1層目の印刷速度を設定する項目があります。

Layerspeed

1層目の速度は基本の印刷速度に対する比率で設定する

全体の印刷速度ですが、他のブログで高解像度出力をしている記事をみると、印刷速度と温度を下げることがよく行われています。しかしながら、今回30mm/s〜80mm/sの範囲でいろいろ出力してみましたが、あまり変化は感じませんでした。

b. 温度

Ultimakerなどで0.02mmで出力している例を見ると、185℃というかなりの低温設定で出力しています。試したところ、低温で出力するとひも状のごみを抑制できるのですが、一方で表面が荒れる傾向があるようです(逆に温度をあげると表面が奇麗になるがひも状のゴミが出る)。

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0.05mm積層、温度208℃、速度45mm/sで出力。ひも状のゴミは殆どないが、表面があれあれ

なお、適切な温度はフィラメントによって異なると思われます。

c. Dwindle

Skeinforgeのプラグインで、描画の終端でプラスチックの供給量と印刷速度を減少させます。ひも状のゴミを減少させる効果が期待できます。0.04mm積層での出力で一番良好な結果だったのは、このDwindleを使った設定でした(結果のところで写真を載せたサンプルです)

Dwindle

Dwindle設定。効果はあるのだが決定的ではない

ちなみに、絞る量を多くしすぎるとレイヤー厚が足りなくなり、表面がぼこぼこになります。

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Dwindleで供給量を絞りすぎた例。0.04mm積層

d. Tower

同じくSkeinforgeのプラグインで、塔状の形状の造形を行う際に、1層ずつ描画するではなく一つの塔をまとめて複数層出力します。

 

Tower

TowerをONにすると、通常通り1層ずつ描画(右)するのではなく「塔」をまとめて複数レイヤー描画し、次の「塔」の描画に移る(左)

 

Tower

Tower設定

ひも状のゴミの防止にかなり効果があるのですが、細部を描画する際に印刷速度が大きく落ちるため、ノズルが造形物を溶かしてしまうと言う致命的な欠点があります… サイズ・形状によっては問題なく出力できると思われます。

 

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ごみは少ないものの、指の先や目の頂部が溶けてしまっている。0.04mm積層

 

4. とはいえ意外とFDM方式は発展余地がありそうです

結局、そこそこ満足できる結果だったのは0.065mmまででした。が、FDM方式でもSTL方式のような高解像度が狙えそうなことがわかって興味深いです。Dwindleや出力温度などの設定や、ゴミが出にくいフィラメント材質を追求していけば十分可能性はあるように思えます。今回は試していませんが、0.25mmなどの小径ノズルでXY平面の解像度も改善できるでしょう。

ただ、小さなカエルを出力するのに1時間とか平気でかかってしまうため、実用性は用途によって限られてくると思われます。高解像度が必要で、小さいため時間も節約できるとなると、アクセサリなどのロストワックス用の型などが向いているかもしれませんね。

(Ref.)

Thingiverse - Treefrog by MorenaP
今回使用したモデルです。かわいいですよねー  なお、写真掲載にあたっては作者様に許可を頂いております。

3D printer improvements - How fine can an Ultimaker print?
Treefrogを使ってUltimakerで高解像度出力した例

Reprap development and further adventures in DIY 3D printing - Slic3r is Nicer - Part 3 - How low can you go?
こちらはRepRap機での高解像度出力。スライサーはSli3rを使用

3D printer improvements - 3D printing with a smaller nozzle diameter
小径ノズルでの出力例(やはりTreefrog)

2 件のコメント:

  1. 小さく複雑な印刷をするのって大変ですよね。一度だけ厚さ0.1mmで印刷しようとしたけど印刷時間が桁違いに増えて嫌になりました。自分のも公式掲示板で蛙を印刷しまくって投稿してる人達がいて「同じプリンターでそれはねーよ」とか突っ込みを入れたくなるのですが、本当にスライサーの違いとか設定の違いで別物になるので頭が痛いです。手元ではだいたい3センチを越えるような機械部品の印刷が多いので、層厚0.4mm 80mm/sでドバーっとやってます。

    ps 3Dプリンターのブログは多いけど、半分以上は数ヶ月やって音沙汰なくなってしまう。このブログが長続きするといいなあ。興奮した様子でこんなのが出るとか欲しいとかいう話はおなかいっぱいですよ。

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  2. スライサーの違いでそれだけ違うのは黎明期というのもあるんでしょうね。
    洗練されてくれば、用途によって最適なG-Code生成等の実装が住み分けされてくるのかなーなどと思ってます。

    印刷速度重視なら積層ピッチよりもむしろノズルの位置決め精度が気になりますよね。デルタ式(パラレル式)のプリンターやリニアレールを使っているBlade-1が積層が奇麗だという話を聞いた事があります。

    ブログは長続きさせるよう頑張ります(汗 ただ、現状3Dプリンターメインになってますが、方向性はいろいろ考えていきたいです…

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