2013年1月13日日曜日

AVM - 米軍が目指すモノ作り革命(前編)

DARPA (国防高等研究計画局)という機関をご存知でしょうか。アメリカの国防総省の機関で、ハイリスクで野心的な技術開発を行っています。前身であるARPAの開発したARPA-netが後にインターネットに発展したことが有名ですが、SLS方式の3Dプリンターの開発も支援していたりします。

DARPA FANG Challenge 1 Mobility Drivetrain Guidelines

Photo by DARPA



 

実は「MAKER」のようなデジタル・ファブリケーションの動きはDARPAもいち早く注目しています。高額化・長期化・高リスク化する兵器開発の解決策になるのではないかという期待があるのです。兵器の開発は膨大な時間と費用がかかるだけでなく、当初見積を超えてコストが増大し計画が中止される事が珍しくありません。古くはXB-70から最近であればFuture Combat SystemEFVまで開発中止の憂き目を見たプロジェクトは数多く、まさしく死屍累々の有様です。

AVM (Adaptive Vehicle Make) と呼ばれるDARPAの計画は、こうした兵器開発の問題についてデジタル・ファブリケーションなど新しい手法を導入する事で解決しようとする試みです。野心的かつ複雑な計画なので、正直なところ私も完全には理解できていないのですが、大変興味深いので紹介してみます。

AVMはMETA、iFAB、FANGと呼ばれる3つのサブプロジェクトからなっています。METAは設計ツールの開発、iFABは試作車両を製造する工場です。FANGはMETAとiFABの成果を活用し、ウェブコミュニティ上で海兵隊向けの装甲戦闘車両の開発と試作をおこないます。従来兵器開発は10年かかる事も当たり前でしたが、AVMはわずか5年あまりでこれら全てを実現する事を目指しています。

1. META Toolsによるモデルベースデザイン

META

Photo by DARPA

METAはモデルベースデザインと呼ばれる手法で装甲戦闘車両の設計をおこなうツールを開発するプロジェクトです。モデルベースデザインとは乱暴に言うとコンピューター上にモーターやらエンジンやらの部品をシミュレーションして、それを組み合わせて製品を作ってしまおう、という開発方法のようです。

例えば、これ位の形のモーターにある電流を入力したときにこれ位の力と速度で回転して、熱と振動はこれだけ発生する、といったシミュレーション機能を持つモデルがあるとします。これを現実の部品を組み立てるように他のモデルと組み合わせて製品を構成すれば、全体としてどのような動作をするかをコンピュータ上でシミュレーションすることができます。

モデルベースデザインについて説明するDAPRAの動画。兵器開発の説明とは思えないノリです。Video by DARPA

モデルの選択や組み合わせはコンピュータ上で自由に変更できますので、期待した性能が出ない、騒音がひどいといった問題があればすぐに他の方法を試す事ができます。試作品を実際に製造する従来の方法に比べると試行錯誤が遥かに容易です。どれ位違うかというと、METAは従来の5分の1の期間で設計開発がおこなえることを目標にしています。

Commodel

METAのモデルライブラリの説明。エンジン等構築するモデルの範囲、機構や熱など再現する項目、ファイルの構造が示されている。CADで形状を、Modelicaでシミュレーションをしているのがわかる。Figure by DARPA

ちなみに部品のライブラリはC2M2Lというサブプロジェクトで構築しています。各部品のモデルは3DCADによる形状や重さ、性能、熱や振動、電磁放射から組み立て方法やデータの送受信といった情報まで持たせるようです。コンピュータ上での殆ど完全な再現をめざしているのが伺えますね。

2. FANG - ウェブコミュニティ VehicleForge でクラウド兵器開発

META Toolsも野心的ですが開発方法もぶっとんでいます。クリスアンダーソンの「MAKER」を読まれた方はLocal Motorsというニッチな自動車会社が登場したのを覚えておられるでしょうか。

XC2V

XC2Vはウェブコミュニティによる軍用車開発のテストとして実施された。写真はLocal Motorsによって開発製造された試作車。Photo by DARPA

Local Motorsではウェブコミュニティで製品の開発をおこなっています。誰でもウェブサイトにログインして自分の設計やデザインを自由に提案できるのです。オープンソース系のソフトウェア開発でよくおこなわれる方法ですね。FANGプロジェクトでは、なんとこの方法で戦闘車両を開発しようとしています。

アメリカ国民であれば誰でもVehicle Forgeと呼ばれる開発サイトに登録し、FANGに参加する事ができます(輸出規制のため外国人は登録できません)。参加者はチームに分かれて設計開発をおこない、完成度を競い合います。最終的にもっとも完成度の高いデザインを開発したチームに賞金が支払われる仕組みです。

従来は何社か企業を選定して、その会社の設計チームに開発をおこなわせるのが常識でした。FANGでは大企業の開発チーム以外にベンチャー企業や大学、そして余暇に参加する学生や技術者達が、なかばボランティアで開発するというちょっと信じられない仕組みです。

Virtual workshop

Vehicle Forgeのサイトに統合された設計環境の画面。Screenshot by DARPA

そして、コミュニティサイトであるVehicleForgeにはフォーラムやSNSといったコミュニティ機能だけではなく、META Toolsが組み込まれています。Tinker CADのようなクラウドサービスのイメージでしょうか。ウェブ上で設計ができるようです。

※長いため2回に分けます。後編はこちら

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